「あのさ、あなた2回生って昨日は言ってたけど、留年でもしてるの?」
「は?」
彼女のその言葉に彼は思わず、教室へと向かう足を停めてしまう。
「昨日調べたら、あなた90年生まれでしょ。」
「どうして知ってんの?」
架の目は見開き、その表情は「驚きを隠せない」という慣用句を体現しているようだった。
「ふふふ・・・」
その不気味な笑い声の後に、笑えない言葉が続いた。
「本条架、
法学部法律学科の2回生。
長崎県長崎市が本籍。
一般入試後期試験で合格。
1回生の時には履修科目の半分以上が不合格。
ポータルサイトのパスワードは、MKL....」
彼女の言葉に、冷や汗が今にもどっと滝のように流れ出るかのような、恐怖感を覚えた。
「ちょっと待て、
何でそんなこと知ってんだ。」
今言葉を遮らなければ、その冷や汗で脱水症状になるかとさえ、架には思われた。


