レポート


「ストーカー君もこの講義履修してたんだ。」

 講義の途中で大声を出したことで、2人には否が応でも注目が集まってしまった。

 その気まずさに耐えられず、彼らは教室を抜け出して来たのだった。

「誰がストーカー君だ‼」

 午前中の理系キャンパスは、どういう理由か、人の気配がほとんどなかった。

 よって架は遠慮なく大声で反論できた。

「だってそうでしょ。」

 昨日の狼狽えていた彼女とは打って変わって、今日は饒舌である。

「あんただろそれは。

 わざわざ俺の後ろの席に座りやがって。

 このストーカーちゃん。」

 しかし、架の反論も彼女には馬耳東風、なんのそので、全て右から左に受け流されてしまう。
 
「ストーカーちゃん?

 なんて可愛い名前なの。」
 
 架はそんな彼女の不気味な態度に、

 ―これ以上、この人に関わらない方が良い―

 と本能的に察知した。

「俺は、教室に戻る。じゃあな。」

 そう言ってこの場を去ろうとしたが、次の瞬間、架は彼女の不気味さを思い知ることになる。