「なあ待てよ。」 追いつくと、彼は彼女の肩を掴んだ。 「何よ。あんたストーカー?」 彼女は彼の手を振り払い、胸を両手で隠しながら彼の顔を眺める。 人気の無くなった薄暗い棟内で、若い男が後ろから追いかけて来るなど、確かに女性には少し怖い状況である。 「いやいや、違うって。」 「じゃあ何よ。」 そう言われると、彼は彼女の顔をじろじろと見つめ出した。 「ちょっと、何するの‼」 そして急に何かを思い立ったのか、彼女の手を握り、エントランスホールの方へ走り出したのだった。