「瑞希。なんで、ここに来た?」

なんでって聞かれて、答えは1つしかない。

「瞬に会いたかったから、会いに来たの」

そう伝えると、彼はますます顔を歪ませた。

「ここがどこだか分かって言ってる?」

彼の問いに私は小さく頷く。

「分かってるよ。だって、ここは‥‥‥」

初めて来る場所。

それでも、私にはここがどこだか分かっている。

私がこの場所にいて、この橋の向こう側に瞬がいるならここは‥‥‥

この世とあの世の狭間。

「‥‥‥三途の川だもん」

そう伝えると、瞬はゆっくりと頷いた。

「そうだよ。だから、この橋を渡ってはダメだ」

「なんで? 瞬に会いたいのに、どうして渡っちゃダメなの?」

私には、分からない。

瞬が言っている意味が理解できない。

この橋を渡れば、瞬に会えるのに。

どうして、渡ったらダメって言うの?

「瑞希には、まだまだこれからの人生があるから」

私の人生はもうあるわけないのに、瞬は話を進める。

「だから、来た道を戻って。今ならまだ間に合う」

私を納得させようと彼は言う。

けれど、私は大きく首を横に振った。

「いやだ! 戻りたくないよ! だって‥‥‥」

その先の言葉は、きっと瞬を傷つける。

でも、言わずにはいられなかった。

「現実世界に戻ったら、瞬はいないじゃん!」

「‥‥‥」

瞬は黙ってしまった。

それもそのはず。

1週間前、瞬は亡くなった。

それは、あまりにも突然だったのだ。