マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

「もうだめだ……おれ、桃花とつきあえない」
「そんなことないです。おじいちゃんは食べてくれたんだから。一歩前進ですよ」

 わたしが言うと、先輩がちらっとわたしを見た。

「そうか? 桃花、おれのことあきれてるんじゃね?」
「いや、またか、とは思いましたけど」
「ほらな! やっぱりあきれてるじゃねーか!」

 先輩はそう叫んだあと、両手でマロンクリーム色の髪をくしゃくしゃとかきまわした。

 どうしよう。落ち込んでる千彰先輩って……なんだかめちゃくちゃかわいい!

 わたしはそっと手を伸ばし、先輩のふわふわした髪の毛をやさしくなでた。
 先輩はおどろいた顔で、わたしを見る。

「だいじょうぶです。またいっしょにがんばりましょう?」

 わたしが言うと、先輩が赤い顔をしてうなずいた。

「おっほん」

 するとすぐ後ろで、わざとらしい咳払いが聞こえた。
 あわてて振り返ると、そこにおじいちゃんが立っている。

「お、おじいちゃん?」
「わしはふたりがつきあうことを、認めておらんぞ?」

 わたしたちはパッと体を離し、うつむく。
 しかしおじいちゃんは先輩に向かって、袋を差しだした。

「これを持って帰りなさい。ご家族の分も入っとる」
「え……」

 先輩が袋を受け取り、なかを見た。

「これ……師匠が作ったせんべいですか?」

 勝手におじいちゃんを『師匠』と呼びはじめた千彰先輩。
 おじいちゃんはちょっと顔をしかめたあと、黙って背中を向け、店に戻っていく。

「あ、ありがとうございます、師匠! みんな喜びます!」

 先輩がおじいちゃんの背中に向かって叫ぶ。

「おれ、またモンブラン作ってきますから! また食べてください!」

 おじいちゃんはなにも答えなかったけど、千彰先輩はうれしそうだった。