マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

「なんじゃこれは! おまえは味見をしたのか!?」
「は? あ、いや、時間がなくてその……」
「食ってみろ!」

 おじいちゃんがモンブランを差しだす。
 嫌な予感しかしない。

 千彰先輩がフォークを手にし、わたしも同じようにフォークを持つ。
 そしてマロンクリームをふたり同時に口に入れた。

「んぐっ」
「まずっ」

 わたしは口を押さえて、なんとか吐きだすのをこらえ、先輩は勝手におじいちゃんの水を飲みほした。

「千彰先輩っ! また砂糖と塩、間違えたでしょ!?」
「う、またやっちまった……」
「どうしてこんな大事な日に、間違えるんですか!? もう、信じられない!」

 怒鳴ったわたしの前で、先輩はしょぼんとうつむいた。

「このたわけものが! おまえのような未熟者には、わしの大事な桃花を任せられん! 出直してこい!」
「す、すみません」

 千彰先輩が箱のなかにモンブランをしまい、背中をまるめてお店を出ていく。

「あ、栗原くん」

 そのあとをお母さんが追いかけ、声をかける。

「だいじょうぶよ、失敗は誰でもあるから。懲りずにまた来てね」

 先輩はお母さんの顔を見つめ、ぺこっと頭を下げた。
 わたしもそのあとを追いかける。

 店を出た先輩は、はあっと深いため息をついた。