マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

「よかろう」

 おじいちゃんの声にハッとする。

「そこまで言うなら、食べてやろう」
「お願いします!」

 先輩が箱からモンブランを取りだし、さっと紙皿にのせ、フォークを添えた。
 それをおじいちゃんの前に差しだす。
 おじいちゃんはお皿を受け取り、するどい目でモンブランを見つめた。

 わたしは先輩の服をぎゅっとにぎる。
 先輩もまじめな表情で、おじいちゃんの様子を見ている。

 どうしよう、すごくドキドキする。
 でも今日のモンブランは、とってもカッコよくできていた。
 千彰先輩のお父さんが作ったモンブランと、見た目は変わらない。

 おじいちゃんがモンブランに顔を近づけ、匂いを嗅いでいる。
 あまい栗のかおりが漂ってくる。

 大丈夫。きっと大丈夫だ。
 あんなに練習したんだもん。
 千彰先輩のマロンクリームはぜったいおいしい。

 おじいちゃんがフォークでマロンクリームをすくった。
 服をにぎるわたしの手を、先輩が上からにぎりしめる。
 その手はすこし震えていた。先輩もきっとドキドキしているんだ。

 ふたりで息を殺して、おじいちゃんの様子を見守る。
 おじいちゃんが口を開け、マロンクリームを食べた。

 と、その瞬間、ものすごく顔をしかめて、「さくらさん、水!」と言った。
 さくらさんというのはわたしのお母さんだ。
 お母さんが「はいっ」とあわてて水を持ってくる。

 おじいちゃんは水をぐびぐび飲み、すこし落ち着いてから、わたしたちに怒鳴った。