マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

 お店のなかは狭そうで、お客さんはあんまり入れない。
 しかもなかに入ったひとたちが、千彰先輩とのおしゃべりに夢中でちっとも出てこない。
 だから列がなかなか進まないんだ。

 三十分くらい待って、やっと前に並んでいた先輩グループといっしょになかに入れた。

「わぁ……」

 ちいさなお店に一歩入ると、そこはふんわりあまいかおりに包まれていた。
 おせんべいのおしょうゆの匂いとはぜんぜんちがう。

 わたしは前に立つ女子生徒たちの隙間から、ショーケースをのぞきこんだ。

 真っ赤なイチゴののったショートケーキ。
 なめらかなチョコクリームのチョコレートケーキ。
 あざやかなフルーツが山盛りのフルーツタルト。
 真っ白に輝くレアチーズケーキ。

 それから栗色のマロンクリームがくるくる山になった、モンブラン!

 ステキ! 天国ですか? ここは!

 するといっしょに入った先輩たちが、キャーキャー騒ぎだした。

「千彰くーん! また来ちゃったぁ」
「学校ではあんまり話せないしぃ」
「朝からここに来るの、楽しみにしてたんだよぉ」

 あまったるい声が、わたしの耳を通り抜けていく。
 わたしはそっとケーキから視線を上げて、ショーケースの向こう側を見た。