マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

「千尋!」
「あ、お兄ちゃん」
「おまえ、なにしゃべってんだよ。あっち行ってろ!」

 先輩はお盆の上に紅茶のカップとケーキをのせていた。あまいかおりがふわんっと漂う。

 わたしにはもうわかる。
 千彰先輩の作ったマロンクリームの匂いだ。

「ほら、あっち行け! しっ、しっ!」

 先輩がソファーに座っていた千尋ちゃんを、足でお行儀悪く追い払う。
 千尋ちゃんは猫を抱いたまま、「はいはい。お邪魔しましたー」なんて言いながら、にやにや笑って部屋を出ていく。

「くっそ。あのガキ……」

 千彰先輩は文句を言いながらも、わたしのとなりに腰を下ろした。
 そして白い湯気の出ている紅茶とモンブランを、わたしの前に並べる。

「よかったら、食ってくれ」

 わたしはじっと目の前のモンブランを見下ろす。

「これ、先輩が作ったモンブランですね?」

 わたしにはもう、見ただけで先輩のモンブランがわかってしまう。

「ああ、今朝作ったやつだ」
「今朝?」
「毎朝練習のために作ってるんだ」
「毎朝……」

 先輩は照れくさそうに、また髪をかく。

「早くおいしいケーキを、桃花に食わせてやりたくて……」

 その言葉が、胸にじいんっと染みこんだ。

 わたしはフォークを手に取り、「いただきます」と言ってクリームをすくう。
 口に入れると、ちょうどよいあまさと栗のかおりが舌の上に広がって、とろんっとやさしくとろけた。