マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

「ねぇ、ここから見えるよ! 千彰先輩!」

 背の高い香奈ちゃんが、ガラス窓の向こうをのぞきこんで言う。
 わたしも背伸びして見てみると、ショーケースのなかに、色とりどりのたくさんのケーキがキラキラ並んで見えた。

「うわぁ!」

 すっごくおいしそう! もっと近くで見てみたい! モンブラン、あるかなぁ。

「千彰先輩、やっぱり超イケメン!」
「まさに王子さまって感じ! もっと近くで見たいなぁ」

 となりでふたりの声がした。
 あ、そうか。みんなはケーキより、千彰先輩がお目当てだったっけ。

 ショーケースの向こうを見ると、高校の制服の白いワイシャツの上に、落ち着いたブラウンのエプロンをつけた男のひとが、お客さんとにこやかに話していた。

 あのひとが、千彰先輩かな?
 たしかに背が高くてイケメンそうだけど、お客さんが邪魔してよく見えない。

 しかたなくわたしは、みんなに合わせて言っておいた。

「うん。そうだね。早く近くで見たいね」

 ほんとうは千彰先輩じゃなくて、「ケーキを」だけどね。