放課後、三人でドキドキしながら『ケーキショップ・マロンクリーム』へ向かった。
 『マロンクリーム』は学校の校門を出て、わたしの家とは反対方向の住宅地のなかにあるらしい。

 知らない道をきょろきょろしながら歩いていると、赤い屋根にレンガの壁の、ちいさなお店が見えた。

 わぁ、かわいい! 外国の絵本に出てきそうな雰囲気!

 そしてそのお店の前には、わたしたちと同じ制服を着た女子生徒が行列を作っていた。

「あ、あそこよ、あそこ! 『ケーキショップ・マロンクリーム』!」

 藍ちゃんが興奮した様子で、わたしの腕をぐいぐいっとゆらす。

「さすが王子さまの店! めっちゃ並んでるじゃん!」

 香奈ちゃんも反対側から、わたしの腕をつかむ。

「えっ、ケーキ屋さんに入るのに、並ばなきゃいけないの?」
「きっとみんな千彰先輩が目当てなのね」
「さっ、あたしたちも並ぶよ!」

 ふたりに腕を引っ張られ、わたしも長い列の一番後ろに並ぶ。

 前に並んでいるのは、うちの学校の制服を着た女子生徒たちだった。
 どうやら千彰先輩っていうひとと同じ、二年生みたい。

 ふわふわやさらさらの長い髪、春っぽいメイク。
 制服のブレザーの下にカーディガンを着て、短いスカートを風にゆらしながら、にぎやかにおしゃべりしている。

 みんなきれいで、おとなっぽいなぁ。

 それにくらべてわたしは、ちょっと寝ぐせのついたままの髪に、薬用リップをつけただけ。
 なんだか恥ずかしくなってきちゃった。