次の日、学校に行き、昇降口で靴を履き替えていると、美咲先輩と女子グループがわたしを取り囲んだ。
 わたしはびっくりして、その場に立ちつくす。

「ねぇ、あなた」
「は、はいっ」

 緊張のあまり、気をつけの姿勢で声を上げる。
 美咲先輩たちは顔を見合わせてから、わたしに向かって言う。

「千彰くんとつきあってるなんて、うそだったのね?」

 う、やっぱりバレてる。どうしよう。
 昨日わたしが叫んじゃった声、聞こえちゃったんだ。

「うそなんでしょ!?」

 美咲先輩に迫られ、わたしはこくんっとうなずく。

「やっぱりそうだと思った」
「千彰くんがこんな地味でガキっぽい子と、つきあうわけないもんねぇ」

 地味でガキっぽい子……わかってるけど。わかってるけど。

「だったらさ、もう千彰くんにまとわりつくの、やめてくれない?」

 強い口調で言われて、心臓がドキッとした。

「千彰くんに頼まれたのかもしれないけど、ぜんぜん似合ってないから」
「ほんと。千彰くんも千彰くんだよねぇ。いくらニセ彼女だからって、こんな冴えない子を選ぶなんて」

 先輩たちがバカにしたようにくすくす笑う。
 わたしはうつむいて、スカートをぎゅっとにぎる。

 先輩たちはみんなきれいだ。髪もメイクも制服の着こなしも。
 きっとこういうひとたちが、千彰先輩とお似合いなんだ。

 そのときわたしの前に、ふたりの女の子が立ちはだかった。