翌日から、なぜか千彰先輩は、いままで以上に、わたしにからんでくるようになった。

 お昼はいっしょにお弁当を食べようと誘ってくるし、放課後は授業が終わると同時にうちのクラスにやってくる。
 最近はずうずうしく、教室のなかまで入ってくるし。

 そのたびにクラスの女の子たちの視線が痛かったけど、千彰先輩はみんなに営業スマイルを投げかける。
 するととたんにみんなぽわんとしちゃって、わたしのことなんかどうでもよくなっちゃうみたい。

 今日も昼休みになると、先輩はわたしの教室にやってきた。

「これ、よかったら食べて」
「えっ」

 先輩が差しだしたのは、ケーキの箱だ。

「みんなのぶん、入ってるから」
「えー、いいんですか!?」

 藍ちゃんと香奈ちゃんが、悲鳴のような声を上げて飛んでくる。

「どうぞ。いつもおれの桃花が、お世話になってるんで」

 は? 先輩。「おれの桃花」ってなに!?

「お世話だなんてー」
「ねー」

 キャーキャー興奮している藍ちゃんたちにもう一度笑いかけ、先輩は「桃花、弁当食べに行こう」と誘う。
 わたしと千彰先輩は、いつもあの裏庭のベンチで、ひっそりとお弁当を食べているんだ。

 先輩はスタスタと教室を出ていく。
 そのすきに、藍ちゃんたちが耳元でささやいてくる。