「今日のモンブランは自信作なんだ」

 桜の花が、すっかり散ってしまった公園。

 あたたかい日差しの下で微笑む千彰先輩は、機嫌がよかった。
 満足そうな顔つきで、わたしにケーキの箱を渡してくる。

「開けてみてくれ」
「はい」

 ベンチに並んで座って、ケーキの箱を開けた。

 おおっ、モンブランが二個入っている。
 ちゃんと倍増してくれたんだ。

 ふたつのモンブランを見たら、なんとなく沈んでいた気分が、ぐわんっと上がってきた。

「今日は見た目がよいですね!」
「だろ!? いつもよりずっと丁寧にクリーム絞ったからな」

 はっきり言ってお店に売っているのよりは劣るけど、この前よりはちゃんと上達している。
 きっと千彰先輩、がんばったんだ。

 しかし肝心なのは、ケーキの味。

「では、いただきます」

 フォークでマロンクリームをすくって食べる。
 となりで千彰先輩が、わたしの顔をじいっと見ている。

「ん? ん? んー!?」
「どうなんだよ!?」

 わたしは吐きだしそうになったのをなんとかこらえ、そばにあったペットボトルのお茶といっしょに、クリームを流し込んだ。