「い、いっしょに帰れば?」
「そうだよ。そうしなよ」
「う、うん。ごめんね?」
「いや、いいって!」
「ぜんぜん、いいって!」

 藍ちゃんと香奈ちゃんが苦笑いしながらそう言ってくれたので、わたしはロボットみたいにぎこちなく先輩のところへ向かう。

 いや、だって、ここで断ったら、あとで先輩にぶっ飛ばされそうだし……

 わたしが近づくと、先輩はまわりのひとたちに向かって、やわらかい口調で言った。

「悪いけど、おれと彼女のことは、そっとしておいてほしいんだ。よろしく」

 そして極めつけの営業スマイル。
 女の子たちがぽおっと赤くなっているのがわかる。

「いこう」

 先輩はわたしの手をつかむと、みんなをかきわけて歩きだした。
 わたしの手や顔や体が、熱が出たように熱くなる。

 わたしと千彰先輩は、みんなに注目されながら廊下を歩いた。
 恥ずかしい。恥ずかしすぎて死にそう。

 千彰先輩はわたしの手をつないだまま、昇降口まで進み、靴を履き替え、校門を出て、わたしの家のほうまで歩いてきた。
 学校からだいぶ離れた商店街まで来ると、やっと先輩は手を離してくれた。

 わたしはもうぶっ倒れそうだ。ぜったいこれ、熱が出た。