マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

 昼休みの廊下を抜け、渡り廊下を渡り、ひとけのない裏庭につくと、やっと千彰先輩は手を離してくれた。

「ど、どういうことですか!? わたしのこと、か、か、か、彼女って……」
「うるせぇな、ギャーギャー騒ぐな。とりあえず座れ」

 先輩は髪をくしゃっとかきながら、古びたベンチに座る。
 わたしは口をとがらせたまま、ベンチの端っこに腰を下ろした。
 先輩とわたしの間を、春の風がすうっと通り抜ける。

「あの女が、つきあってくれってしつこかったんだよ。だから『彼女いるから無理』ってうそついたんだけど、信じてくれなくて。そんなときちょうど、あんたを見かけたから……」
「それであんなこと言ったんですか!? わたしのこと、彼女だなんて!」

 先輩は頭に手を当てたまま、ちらっとわたしを見る。

「まぁ、いいじゃん。しばらくそういうことにしとこうぜ。女よけのために」
「は? わたしはそんなの嫌です! ちゃんと撤回してください!」

 この前、香奈ちゃんたちが言っていた言葉を思い出す。

『王子さまの彼女になったひとは、きっと大変だよ。学校中の女子生徒に恨まれちゃうもん』

 体がぶるっと震えた。

 千彰先輩のほんとうの性格を、みんなは知らない。
 千彰先輩はこの学校の、キラキラでモテモテの王子さまなんだ。
 わたしが彼女だと思われて、学校中の女子に恨まれるなんて、冗談じゃないよ。