「桃花ー、屋上行くよー」

 次の日の昼休み、藍ちゃんと香奈ちゃんがお弁当の包みを抱えて、わたしの席に来た。

 うちの学校は昼休みに、屋上でお弁当を食べてもいいことになっている。
 今日はぽかぽかあたたかくて良い天気だから、屋上で食べようって朝から約束していたんだ。

「うん」

 わたしもお弁当を抱え、みんなといっしょに廊下へ出る。

 昨日の日曜日、公園で千彰先輩に会ったこと、まだふたりには話していない。
 でもお弁当を食べながら、ぜんぶ話そうと思っていた。
 ふたりとも、びっくりするだろうなぁ……

 だけどわたしが千彰先輩と会ってモンブランを食べるのは、千彰先輩にとって必要なことなんだ。
 千彰先輩を立派なパティシエにするために、わたしも協力するって決めたんだから。

 気合を入れるため、ぐっと手のひらをにぎりしめたとき、見なれた髪の色が見えた。

「あ! 見て!」

 叫んだのは香奈ちゃんだった。

「千彰先輩がいる!」

 屋上へつづく階段の下。向かい合って話している男子生徒と女子生徒。

 男子のほうは千彰先輩。
 そして女子のほうは……桜色のカーディガンの美咲先輩だった。