マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

 すごいな、千彰先輩は。
 お父さんみたいなケーキ屋さんになりたいなんて。

 わたしの頭に、おじいちゃんの顔が浮かぶ。
 わたしはおせんべい屋さんになりたいなんて、一度も思ったことないよ。

 でも、おじいちゃんやお父さん、お母さんの働く姿はちいさいころからずっと見てきた。
 だからそんな家族のこと、尊敬してるし、感謝もしてる。

「あ、でもわたしなんかより、先輩のお父さんに直接アドバイスもらったほうが……」
「いいんだ」

 わたしの声を千彰先輩がさえぎった。

「親父には、おれ……見捨てられてるし」
「え?」

 先輩は一瞬うつむいたあと、すぐに顔を上げて言った。

「とにかく! 来週も作ってくるから、また食ってくれるか?」
「も、もちろんです! 楽しみにしています!」

 いつのまにか、先輩のモンブランは全部食べ終わっていた。
 おいしくないといっても、大好きなモンブランが食べられるだけで、わたしは幸せだ。

「ごちそうさまでした!」

 わたしの声に、先輩はちょっと照れくさそうに笑った。
 その笑顔は、あの営業用のキラキラスマイルとは違って、なんだかかわいい。

 わたしはこっちの笑顔のほうが好きだなぁ、なんて思ってしまった。