マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

「おい」

 となりで先輩が言った。

「ほんとのこと、言っていいぞ?」

 顔を向けると、真面目な顔の千彰先輩と目が合った。
 その表情を見たら、やっぱりうそはいけないなと思い、わたしは口を開く。

「あの……ほんとはあまりおいしくないです。この前食べたモンブランとは違うんですか?」

 先輩はわたしから顔をそむけ、また髪をくしゃくしゃとかく。
 それからぼそっと小声でつぶやいた。

「それ……おれが作ったモンブランなんだ」
「えっ!」

 ヤバい。千彰先輩が作ったケーキのこと、「おいしくない」なんて言っちゃった。
 わたしの頭に「ふざけんじゃねぇ!」って怒鳴りつける先輩の姿が浮かび、体が震えあがる。

 だけど先輩は肩を落として、深くため息をついた。

「妹の千尋にもいつも言われてるんだ。『千彰兄ちゃんの作ったモンブランはまずい』って」
「はぁ……」
「だから他のやつに味見してほしかったんだけど……やっぱりまずかったか……」
「いえっ、まずいってほどじゃ……」
「でもおいしくないんだろ? いいよ、ほんとのこと言ってもらったほうが、楽に死ねる」
「し、死んだらダメです! ケーキぐらいで!」

 わたしはとなりにいる千彰先輩の腕を、がしっとつかんで言った。
 先輩はゆっくりと顔を上げて、こっちを見る。