マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

「ど、どうだった?」
「やっぱりマロンクリームの匂いがした?」
「スポンジケーキみたいにやわらかかった?」

 わたしは苦笑いをつづけるしかない。

「いいなぁ、あたしも貧血で倒れればよかった」
「そうすれば王子さまが、お姫さま抱っこして保健室へ……」

 妄想の世界に入りはじめたふたりを、現実に引き戻す。

「そ、それより、美術室に行かないと……」
「もうー、桃花ずるいよー」
「ほんと。ずるい、ずるい!」

 先輩にぶつかったくらいでこんなに言われるんだったら……昨日とか今朝とか、先輩とふたりきりで会ったこと話したら、ふたりはどんな反応するだろう。
 じつはその話、まだしてないんだ。なんとなく、言いそびれちゃって……

「でも千彰先輩って、彼女いないみたいね。取り巻きの女の先輩は、いっぱいいるけど」

 藍ちゃんがわたしの腕を組んだまま言った。

「てか、王子さまの彼女になったひとは、きっと大変だよ。学校中の女子生徒に恨まれちゃうもん」

 香奈ちゃんの言葉に、わたしもうなずく。

「た、たしかに……」

 まぁ、女嫌いの千彰先輩が、誰かとつきあうはずはないけど。
 すると藍ちゃんと香奈ちゃんが、わたしの両側で笑った。

「ま、あたしたちには縁のない話だから」
「心配無用だよね」

 三人いっしょにあははっと笑う。
 先輩と日曜日に会う約束したこと、なんだかさらに言いにくくなっちゃった。