でも今年の春、高校一年生になったわたしは、胸をワクワクさせていた。

 中学生までわたしのうちはおこづかい制じゃなくて、なにか欲しいときはお父さんに伝えて、必要なものしか買ってもらえなかった。
 だけど高校生になったら、すこしだけおこづかいをもらえるようになったんだ。

 おまけに学校帰りに、寄り道もできるようになった。
 ということは自分でケーキを買ったり、友だちとカフェに寄って、ケーキセット食べたりできちゃうんじゃない?

 うわぁ、サイコー! 高校生、サイコー!

「ねぇ、桃花ぁ。今日の帰り、ちょっとつきあってくれない?」

 窓の外の桜を見ながら、ついニヤニヤしていたわたしに、同じクラスの(あい)ちゃんが声をかけてきた。

 藍ちゃんは、中学生のころから仲が良かった友だちだ。
 茶色くて長い髪をくるくる巻いた、おしゃれな女の子。

 わたしはいつも藍ちゃんに、「髪のばせば?」とか「メイクしてあげようか?」とか言われている。

 真っ黒な肩上のボブヘアで、メイクもしたことがない、クラスで一番背の低いわたしは、中学生……いや、下手すれば小学生に見えちゃうらしい。
 って、小学生はちょっと失礼だよね?