マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

「どうしたの? 千彰くん」

 そばにいた女の先輩が声をかけてきた。

 あっ、この前ケーキ屋さんにいた、美咲先輩だ。
 よく見ると、ほかにも女のひとがたくさんそばにいる。

「わっ、す、す、すみませんっ! ぶつかってしまって!」
「いいよ」

 そう言って千彰先輩がにっこり微笑む。
 うわ、これ、営業スマイルのほうだ。

 すると先輩がわたしだけに見える角度で、一瞬じろっとにらみつけた。
 まるで「気をつけろ、ボケっ」とでも言っているかのように。

 わたしの体がびくっと震えあがる。

「ほ、ほんとうにすみませんでしたっ!」
「いいって。気をつけて歩くんだよ?」

 先輩はうそっぽい声をかけ、女のひとに囲まれて去っていく。

「千彰くん、やさしいのねー」

 なんて言われながら。

「も、桃花っ」

 そんな王子さまご一行をぼうぜんと見送っていたら、香奈ちゃんと藍ちゃんがすごい勢いで駆け寄ってきた。

「い、い、いまのっ、『マロンクリームの王子さま』だよね!」

 わたしはてへっと苦笑いして答える。

「うん、そうみたい。お腹すきすぎて、ふらっとしてぶつかっちゃった」

 するとふたりが、がしっとわたしの両腕をつかんできた。