マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

「こいつ、おれの妹の千尋」

 立ち上がった先輩がわたしに言う。

「いつも兄の千彰がお世話になっております!」

 千尋ちゃんはそう言って、ぺこっとわたしに頭を下げる。

「い、いえっ、お世話なんて……」

 さっき会ったばかりだし。
 わたしはあわてて首を横に振る。

「じゃ、帰るぞ、千尋」

 千彰先輩はふいっと顔をそむけて、わたしを残して立ち去った。
 千尋ちゃんはもう一度ぺこっとわたしにおじぎをしてから、先輩のあとをついていく。

 わたしはふたりの姿を見送ると、へなへなとベンチの上に座りこんじゃった。

「な、なんなのぉ?」

 千彰先輩って、キラキライケメンで、ふわふわやさしい、『マロンクリームの王子さま』じゃなかったの?
 あれじゃまるで、口も態度も悪い、ヤンキーだよ。

「でも……」

 わたしは先輩の言葉を思い出す。

『これから毎週日曜日、ここに来い。モンブラン食わせてやっから』

 毎週日曜日、モンブランが食べられるんだ。しかもタダで!
 どうしよう。顔が勝手に、にやけてしまう。

 箱のなかから、食べかけのモンブランを取りだした。
 それにぱくっとかじりつく。

「おいしー!」

 こんなおいしいモンブランを毎週食べられるなんて……どうかこれが夢じゃありませんように!