マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

 わたしは言われたとおりに、絆創膏を袋から出す。
 そして背の高い先輩を見上げる。

 茂みのなかで猫と格闘していたせいか、髪はボサボサだし、制服の白いシャツは乱れているけれど……やっぱり顔はイケメンだ。
 みんながキャーキャー騒ぐ意味が、よくわかった。

 わたしはすこし背伸びして、震える指で、千彰先輩の頬に絆創膏を貼ってあげた。

「サンキュ」

 笑いもせずにそう言った先輩に、わたしはおそるおそる聞いてみる。

「あの……お店にいなくていいんですか?」

 だってお店の前には、まだたくさんの女子生徒が並んでいた。
 あのひとたちみんな、マロンクリームの王子さまがお目当てのはず。

「ああ、なんかもう、めんどうになっちまって。一応あいつら客だから、しかたなく笑って対応してるけど。うちのケーキ食いたいわけでもねーのに、毎日押しかけてきて、マジうぜぇ。だから店番、母さんに任せて逃亡してきた」

 千彰先輩は吐き捨てるようにそう言うと、ベンチにどかっと腰を下ろした。
 そして箱のなかの、食べかけのモンブランをちらっと見て聞く。