マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

「ほら、立てよ。地面に座るのが好きなのか?」

 千彰先輩の大きな手が、目の前に見える。
 これって……ここにつかまれってことだよね?

 わたしはおそるおそる手を伸ばし、千彰先輩の手に触れる。
 すると先輩はその手をぎゅっとつかんで、わたしの体を引っ張り上げた。
 わたしは勢いよく立ち上がり、そのまま先輩の体にぶつかってしまった。

 ふわっとあまい、いい匂い。
 マロンクリームの匂いだ。

 って、そんなこと思ってる場合じゃない。

「うわっ、すみませんっ」

 いそいで離れたわたしを、千彰先輩がにらむ。
 でもそのとき、わたしは気づいた。
 先輩の頬に、猫にひっかかれた傷があることに。

「あのっ、ちょっと待っててください!」

 わたしはベンチの上に置いてあったカバンの中から、絆創膏を取りだした。
 わたしってよくドジって転んだりするから、絆創膏はいつも持ち歩いているんだ。
 それを千彰先輩に渡す。

「こ、これ、使ってください! そこ……血が出ているので」

 わたしが先輩の頬を指さすと、先輩は不審そうに自分の頬をさすった。

「ああ……ほんとだ。じゃあ、あんたがつけてくれ」
「えっ」
「自分じゃできねぇから……つけてくれ」