マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

「あんた……さっきモンブラン一個だけ買ってった……」
「は、はい」

 やっぱり目の前にいるのは、あのケーキ屋さんにいた千彰先輩で間違いなかった。
 もしかしてそっくりな別人なのかも、なんて思ったりもしたけど。

 だって雰囲気、違いすぎだよ。
 二重人格なのかな、このひと。

 千彰先輩が顔をしかめて、わたしの前にヤンキー座りをした。
 そしてびくびくしているわたしの顔を、するどい目つきでのぞきこんでくる。

「あんた、もしかして……」
「は、はい?」
「ここでモンブラン食ってた?」
「えっ、なんでわかるんですか!?」

 千彰先輩の指先が、すうっと動いた。
 わたしは恐ろしさのあまり、体をこわばらせる。

 そんなわたしの口元に、先輩の指先がちょんっと触れた。

「クリーム、ついてる」
「へ?」

 千彰先輩はわたしの口元のクリームを指先で拭うと、それを自分でぺろっと舐めた。

「うん。やっぱり親父の作ったマロンクリームはうまい」

 えっ、えっ、えー! なにしてるんですか!? 先輩!

 くらくらしてきたわたしの前で、千彰先輩はなにごともなかったかのように立ち上がる。
 そしてわたしに手を差しだした。