マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

「藍ちゃん! ケーキ買うんでしょ?」

 わたしが肘でつつくと、藍ちゃんはハッとしてから、「うん、うんっ」と何度もうなずいた。
 そして桜色カーディガンの美咲先輩の後ろから、「すみませんっ、ケーキください!」と叫んだ。

 先輩たちが、眉をひそめてわたしたちを見る。
 「なにこの子たち」って顔つきで。

 でも藍ちゃんはわたしの腕をつかみ、いっしょにずいっと前に進んで、千彰先輩に向かって勇気を出して言った。

「え、えっと、イチゴショートとチョコレートケーキと、フルーツタルトとレアチーズケーキを一個ずつください!」

 藍ちゃんの声に「ありがとうございます」と千彰先輩がにっこり笑った。
 とたんに藍ちゃんの顔が、ピンク色から真っ赤に変わる。

「か、香奈ちゃんも買うんでしょ?」
「あ、う、うん。あたしもっ、同じものください!」

 香奈ちゃんも前に出て叫んだ。
 千彰先輩がまた「ありがとうございます」と微笑む。
 香奈ちゃんの顔もみるみる赤くなっていく。

 すると千彰先輩が、わたしのほうを見て口を開いた。

「そちらのお客さまは?」
「え、わ、わたし? ですか?」

 千彰先輩がにこやかにうなずく。

 わたしはくちびるを噛みしめて、ショーケースをにらんだ。
 キラキラ輝くケーキをぜんぶ買いたいところだけど、そんなのは無理だ。

 わたしのおこづかいで買えるのは、たったひとつ。
 それはもう心に決めている。

「モ、モンブランをひとつください!」

 力をこめて人差し指を一本立てたら、千彰先輩が「ありがとうございます」とにっこり微笑んだ。