それからわたしたちがどうなったかというと……たいして変わらなかった。

 千彰先輩は朝も昼も放課後も、わたしの教室にやってくる。
 最初ビビっていたクラスのみんなも、いまでは慣れてしまったのか、千彰先輩が教室にいても気にしていない。

 学校中のひとたちもそうだ。
 はじめのうちはひそひそ声があちこちから聞こえたけど、千彰先輩がじろっとにらむから、みんななにも言わなくなった。

 それで先輩のケーキ屋さんはというと……

 千彰先輩がお店番をする日。
 『ケーキショップ・マロンクリーム』には、ふたたび行列ができていた。

「王子さまキャラが崩壊して、逆に千彰先輩の人気が高まっちゃったってことかぁ」

 久しぶりに行列に並びながら、わたしのとなりで香奈ちゃんが言う。

「千彰先輩の横暴っぷりに、ファンが増えちゃった感じね」

 藍ちゃんもわたしのとなりで、にっこり微笑む。
 わたしは、ははっと苦笑いするしかない。

 こんなことになるなんて、予想外だったよ。