マロンクリームの王子さまは、わたしのことが好きみたい!?

 ふわふわした、マロンクリームみたいな髪の色。
 切れ長だけどやさしそうな瞳に、すうっと通った鼻筋、きれいなお肌。

 口元に笑みを浮かべた千彰先輩が、「どうも」と落ち着いた声で言う。
 それだけで先輩たちがまた騒ぐ。

「ねぇねぇ、千彰くん! 今度の日曜日用事ある?」
「あっ、ずるいよ、美咲(みさき)! あたしが誘おうと思ったのに!」
「いいじゃん! ねぇ、千彰くん、日曜日どこか行かない?」

 美咲と呼ばれた、桜色のカーディガンを着た先輩が、茶色いさらさらヘアをふぁさっと手でなびかせて聞く。

 すると千彰先輩は、またにっこり微笑んでから、「ごめん。日曜日はちょっと」と答えた。
 先輩たちが「えー」っとがっかりしている。

 たしかに千彰先輩はカッコいいし、モテモテみたい。
 口数は少なそうだけど、チャラいよりはぜんぜんいい。
 それに笑顔が、クリームみたいにやわらかい。

 となりを見ると、藍ちゃんと香奈ちゃんが、ぼーっと突っ立っていた。
 頬をピンク色に染めて、千彰先輩に見とれている。