「せんべい屋の娘として生まれたならば、西洋の菓子など口にしてはならん! じいちゃんのせんべいだけ、食べておればいいのじゃ!」

 これはわたしのおじいちゃんの口ぐせ。
 たしかにおじいちゃんの作ったおせんべいは、とってもおいしいんだけど……

 わたし――鹿子桃花(かのこももか)の家は、百年以上つづく『鹿子家(かのこや)』っていうおせんべい屋さん。
 おじいちゃんはもう五十年以上、『鹿子家』で手焼きせんべいを作っている。

 最初はおじいちゃんも、うまくおせんべいが焼けなくて、とっても苦労したみたい。
 でもいっしょうけんめい修行して、いまではテレビで特集が組まれるくらいの有名人になっちゃったんだ。
 遠くの町からもおじいちゃんのおせんべいを買いに、お客さんが来てくれるようになって……

 だけどわたしはおせんべいじゃなくて、あまーいケーキが食べたいの。

 ふんわり生クリームとイチゴがのったショートケーキとか、濃厚でなめらかなチョコレートクリームで包まれたチョコレートケーキとか。
 タルトやプリンやシュークリームもいいなぁ。

 なかでもわたしが一番好きなのは、マロンクリームがたっぷりのったモンブラン!
 とろけるクリーム。あまい栗のかおり。ふんわかスポンジケーキ……

 うーん、想像するだけで、うっとりしちゃう。