入部して早2週間。少しずつ曲合わせもしたり本型的に部活っぽくなってきた。




「よーし、合わしてみようぜ〜」


涼が声をかけてとき、扉がひらいた。



「あ!皆さんやってますね〜!」




そういって入ってきたのは天然パーマの若い男性教師。こちらに気づくと声をかけてきた。




「君が如月さん?初めまして、顧問の内田直樹といいます。」





顧問の先生…



「如月夏樹です。」



「先生!お久しぶりです!」




怜斗が声をかける。



「どうしたんですか?」

「実は君たちに提案があって〜」




そういってファイルから紙を取り出した。





「じゃーん!これ出てみない?」


みんなで紙を覗き込む。

 



「高校生バンドフェス?」






「そうそう!神奈川県内で毎年6月に行われているイベント!主に高校や中学校の軽音楽部が集まって演奏するんだよ。」




「こんなの初めて知った。」



恭弥が驚く。



「この学校に軽音楽部があったとき、君らの先輩も毎年出てたんだけど…どう?」

「出ます。」



涼は速攻で返事した。



「おーけー!じゃあこっちから申し込み手続きはしておくね。それじゃ、頑張って‼︎」



そういうと慌ただしく部屋を出て行った。



「忙しそうだね。」




入ってきてから5分もいなかったよ?ばーって入ってきてばーって出て行った。ハトみたい。




「あの先生、卓球部の顧問と兼任だからな。」

「だからか。」







みんなで改めて用紙を詳しく見る。




「どれどれ〜。人数制限なし。1チーム2曲まで。コピーバンド、オリジナルソング、なんでもあり!だってさ。」




毎年、結構チーム出るんだね。思ってたより大規模だな。





「大会とかじゃなくていかにも交流会って感じだね。」

「開催日は、6月29日。体育祭の翌々週か。」

「今の実力試せるいい機会だな。」




一旦練習を中断して床に座った。



「とりあえず、曲決めよう。何系がいい?」



涼がペンをカチッと鳴らす。



「俺ベースまだ下手だから難易度高い曲はちょっと。」

「J -pop がベターじゃない?」

「だよな。」

「『地平線上の彼方。』は?」




『地上線上の彼方。』4人組バンド、クラウドの曲だ。CM ソングにも起用されている曲だから幅広い世代に知られている。





「今流行りだしいいな。弾ける?みんな。」

「「「弾ける。」」」


クラウドは俺ら4人全員が好きなバンド。大体の曲は知っているし、曲によっては比較的簡単な演奏のものもある。だからバンド全体でカバーしやすい。



「じゃあもう一曲は〜」

「はい!」




怜斗が勢いよく手を挙げた。





「『カミナリロジック』がいい!」






え、こいつボカロ聞くん?意外過ぎる。








「ロック調だし盛り上がるな。」

「でしょ〜?」

「怜斗,ボカロ聞くの?」




気になって聞いてみた。



「おお、聞くよ。何なら歌い手さんとか踊り手さんめっちゃ好き!!」








あ、これやばくね。











心臓の鼓動が早くなった。







「俺も聞く。練習にちょうどいい難しさなんだよ。怜斗は誰が好きなんだっけ?」



恭弥が聞く。



「安定にサクトさんでしょー、RAMUNE さんでしょーあとー」







「Cyanもよく聞く!!」











バクん!!








やばい、冷や汗かいてきた。







 

涼も会話に乗ってくる。





「Cyanいいよなあ!!夏樹知ってる?」

「へっ?あー、Cyan?うん、」





動揺しすぎて変な返事になってしまう。




「カミナリロジックもCyanが最近カバーしていたからさ〜!」











こいつら俺のこと知ってんの?


え、嘘、ネット果限詳しいやつらだったの。


あ一完全に想定外。こいつら絶対k-popとかロックとかそういう系だと思ってたわ。


待ってぇーマジ無理。今すぐ会話やめて、ガチで。





「同じ高校生とは思えないよなー。」

「いっぱいいいるよね。高校生歌い手。」

「でもその中でズバ抜けてんのはCyanだろ。あと、コードって人。この2人がこの先引っ張りそうだよな。」



「…ねぇさっさと決めようよ。」



盛り上がる前に話を遮った。これ以上は無理




「悪ぃ、じゃあカミナリロジックでいいか?」

「うん。」






RAMUNEさんって結構マイナーだから歌い手界限詳しい人じゃないと知らないんだけど?

それにコードって歌い手も知ってるならよほど歌い手好きなんだな。



ちなみに、RAMUNEさんは女性歌い手さん。両性類といって、男性、女性どちらの声も出せる。その多彩な歌声が人気の人。


コードは俺と同じ高校生の歌い手、低音ハスキーで透明感がある歌声の持ち主。ネットでは大体いつもこの人と比べられる。




色葉もサクトさんは知ってた。ただ、歌い手についてはさほど詳しくないはず。知ってるって言ってもほんの数人。





彩音はそもそも音楽あまり聞かないって言ってたし,とりあえず、歌わなきゃ大丈夫。








俺は話している時と歌ってるときとでは声質が大分違うから、普通にしていればばれない。


歌っている時の声は、…んー、何ていうんだろう。鼻にかかった声っていうのか?若干鼻声っぽくなる。


音程としては話している時よりも低音になる。だからネットで性別どっちって騒がれるんだよ。