きみに、恋う





「なに、」


顔を横に向ければ、机にだらんと左ほおをくっつけて私のほうを向いた篠崎がだらしなく右手を伸ばしていた。



「卒アル」

「……、」

「貸せよ、俺お前の書いてないんだけど」


何様だ、なんて思いながら今日はそう言い返してしまえば本当に描いてもらえなくなるのだけは阻止したいから黙ってアルバムを差し出した。
お返しに黙ったまんま篠崎のアルバムが返ってきた。



「書く」

「書けば」




圧倒的言葉足らずだ、
それなのに、いつもの空気じゃなくてちょっとだけチクチクする。


言い返してこないし、意地悪言わないし、篠崎がおとなしいことが、調子狂う。



調子狂うけど、最後だから、別にいいかもしれない。

この嫌なドキドキを味わうのも、今日で最後だと思うと初めて卒業を実感した気がした。




篠崎のアルバムをひらくと、もうたくさんのメッセージで埋め尽くされていた。

書くところを探そうとすれば、右下の端っこに少し大きめなスペースが残っていて、「ここでいい?」と聞けば「どこでもいい」とそっけなく返された。



何を書けばいいのか、わからなかった。
清水とか、ほかの人にはすらすらと言葉が浮かんできたのに、いざ篠崎に何をいまさら書けばいいのかちっともわからなかった。



篠崎のほうを盗み見れば、清水があけたスペースにもうペンを走らせている。

何を書いてるんだろうと思って背を伸ばしてみれば、しっしと手であしらわれた。