「心優しい聖女フレヤ様! どうかお助け下さいッ!」

「どなた?」


こんな森の奥まで訪ねて来たのが、一国の大臣とは。
呆れちゃう。

指先で髪をクルクルやって、枝毛のチェックなんかしてみたりして。
昔は民の暮らしを最優先に考えて、自分の身嗜みは最低限に整える程度だった。
最近は、フレヤ・ファースト。
 
蜂蜜パックって素敵。
本当に綺麗な金髪。


「北の砦の結界が破られ、魔族の猛攻撃を受けております。国の兵がそちらに取られ、手薄になった東では移民、南からは山賊が都市を混乱に陥れている有様なのです……ッ!」

「ねえ、あんた私になんて言ったか覚えてる?」


爪先のすぐ先で跪く大臣が、ハッと顔をあげた。
真っ赤になって、汗かいちゃって。
醜い。


「あ……ッ! も、もも、申し訳ございませんでしたぁっ!」

「ううん、違う。そんな事言われてない。忘れちゃった?」

「あ、あの時は、わ、私は……っ」