「いいのかい?」


戸惑いがちな低い声が、ずっと若い。でも、お爺さんの声だ。


「お願い。もし嫌なら、元に戻すから……ずっと一緒にいて。お願いよ」

「ああ、フレヤ……!」


震える腕が私を抱きしめてくれた。
あたたかなカイスのぬくもりに、強張った心が完全に溶けていく。

もう私は聖女じゃない。
私は、愛する人だけを見つめて、歩いていきたい。


「大事な話があるよ、フレヤ」

「?」


腕を解いて、カイスが私の目を覗き込んだ。
 

「もしこの先いい人が現れたら、躊躇わずにその男と幸せになりなさい」

「私が嫌いなの?」

「いいや、大好きだよ。だから、せっかく始まったフレヤの新しい人生を邪魔したくない。こっちは片想いで、そっちは勘違いって可能性もあるだろう」

「いじわる言わないで!」


甘えさせてくれるとわかっていて、私はまたカイスにしがみついた。