私の気持ちを和らげてくれるお爺さんの微笑みが、凍った心を溶かしていく。


「お爺さん」

「なんだい?」

「お爺さんは、どうして怒らないの? 知ってるんでしょ。私が、あんまり可愛くない意地悪ばっかりして、みんなを追い返してるって」

「すべては過ぎ去る」


お爺さんは静かにそう、囁いた。


「……」

「フレヤがここへ来るまで、孤独でも満足していた。これが人生だとね。それはみんな同じなんだよ。フレヤを苦しめた人たちも、今苦しんでいる。だがそれは過ぎ去る。過ぎ去れば、静かに待つ日がやってくる。終わりを待つ日がね。その時、穏やかに最期を迎えたいか、憎しみや怒りで忙しく過ごすのかは、個人の選択なんだ」

「……年の功ね」

「そうだね。フレヤ、数年後には、今とは違う毎日を送っているから安心おし」

「お爺さんは、いる?」


骨ばった指でカップを撫でながら、お爺さんは少し、考えていた。
でも目尻を下げて言った。


「しばらくはね。きっと、それも過ぎ去る」