「あなたを愛している女性はどうしました? ミアとかいう」

「メアだ」


ミアでもモアでもなかった。
フィリップ王子は首をふり、空を睨んだ。


「メアは……あの女は駄目だ。甘やかされて育ったせいで、王宮でも我儘ばかり。この非常時に午後の焼き菓子がまだだと言って召使いを叱る。そんな場合ではないとわからない馬鹿だ」


つい、首を傾げてしまう。
馬鹿はこいつだ。


「あなたが選んだ姫ですよ」

「騙された! 純真無垢で清楚なふりして、頭のカラッポな馬鹿女だ!」

「お似合いです」


こんな男を愛していたなんて。
私も、相応の馬鹿だった。眩暈がする。


「そんな事を言わないでくれ、フレヤ! 俺が悪かった。この通りだ!」

「……」


一応、本気でそう思ってはいるらしい。