「フ、フレヤ様……っ、どうか……私と共に来て国境を守ってください……!」

「どなた?」

「!」


ズタボロな姿で跪くイルヴァは、汚れた顔で驚きを表す。


「フレヤ様……ッ!」

「ええ、私はフレヤ。あなたは?」


もちろん、知っている。
城下町の酒屋で、新鮮で素朴な頑張り屋の聖女だと日夜アピールしていた。
それに勇者のアバンが引っかかり、骨抜きにされた。
そしてパーティーに入ってきて、私を追い出した。


「……イルヴァです」


悔しいの?
恐いの?

イルヴァは真っ青になって震えている。


「そう。で、何の用?」

「あ……アバン様の使いで参りました。現在、東の国境は魔物と山賊に蹂躙され、悲惨な状況です」

「ではなぜ後方支援すべきあなたがここに? 恰好からして、聖女でしょ?」

「わ、私は……まだ新米で、その……お役に立てないので……」