白+紅=蒼

ボールでドリブルしながら紅から3メートルほど下がる。





さらに悲鳴が大きくなった気がしたが私は紅だけを見ていた。





私たちに合図なんて必要ない。





白熱する双子のボールの取り合いに恐らく一階にいる男子、女子の部員と2階にいる客席の生徒全員が意識を集中して見ていただろう。







勝者、里中白。






体育館の床に手をついて本気で悔しがっている紅を見て笑う。





「ホホホホ。昔っから紅は私に勝てたことないでしょ~」





「くっそーー!!あーー!!マジで悔しいーー!!!」





「アイスよろしく~」





満面の笑顔で言い、女バスの方へ戻ろうとすると一人の生徒が近づいてきたのが視界に入ってそちらに振り向いき目を丸くした。





「あ、碓井先輩!」





そこには制服姿の碓井先輩がいるではないか。





「え?蒼さん?…ってなんで蒼さん来たのに制服なわけ?」





床から顔をあげた紅が不満そうに呟く。





「ハハハ。ちょっと見に来ただけだからね。それより白ちゃんって本当に運動神経いいんだ」





優しく言いながら碓井先輩が私たちのところに来る。





「運動神経いいって言うよりも紅の動きなんてずっと一緒だから予測できるだけですよ。」





「ハハ。白ちゃん、それ以上言うと紅が立ち直れないよ」





チラッと私の後ろにいる紅を見て言う碓井先輩。





その目線を追うと紅が体育館の床に寝そべっていた。





「え!?こ、紅!?どうしたの?具合悪い?」





急いで駆け寄ると紅が物凄く怖い顔で睨んでくる。





「あぁ、心臓に太っとい釘が刺さった。」





「え!?ど、何処の釘!?」





本気にする私をみて碓井先輩がまた笑った。





「紅?潔く負けを認めないとみっともないよ?」





「……っ~!もうこの無自覚なのも可愛いんだけどなー!!!」





ガバッと立ち上がった紅がぐじゃぐじゃーと私の頭を撫で回す。





「わ!紅!!ちょっと!!」





「白~~!!練習終わりだよー!!」

明美の声がした。





「あ、呼ばれちゃった。じゃぁ紅、碓井先輩!私行くね」





ニコッと笑って紅の腕の中から抜け出し女バスが集まっているところに走る。