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《side.久我杏里》

明日歌が病気で、車に轢かれて死んだ…そう言ったか。そんなはずじゃなかった。今でも他の誰かと幸せにしているのかと思ってた。


「杏里…明日歌は最期の瞬間までアンタを想ってた。やっとこの話を伝えられてよかった」


「なんもよくないでしょ。俺があの時言ってれば明日歌は死んでなかった!!」


俺が明日歌を信じてあの日言ってれば。どんな思いで冬休みの日俺に泣きついたんだろう。


「違う、杏里のおかげで明日歌は最後の一年楽しそうだった。杏里があの子の人生に色を添えたの」


「そんなわけない……ごめん。ちょっと席を外させて」

俺はテーブルに置かれたキーホルダーを持って幹部室を出た。

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《side.本郷波瑠》

杏里が出て行って、風間くんも後を追うように幹部室からいなくなった。


「…まさか杏里にそんな話があるなんて知らなかった」


彼方が自分の手を見つめながら言う。当たり前だけど空気は重い。


「……お前はどうやって杏里がここにいるって知ったんだ」


「私も精神的にきてさ、一ヶ月くらいは何も手につかなかった。だけど明日歌のお願い叶えるためにいろんな人に聞き込んだよ。なんせその時点では名前も知らなかったから。」


「じゃあどうやったの?」


「明日歌の担任の先生に聞いた。個人情報だから名前は言えないけど、転校先の場所ならって。その先生明日歌のお葬式でもめっちゃ泣いててさ。いい先生」


元気にしてるかなあの人。今時あんな熱血教師、漫画の世界だよ。


「それにしてもさ、杏里一人にしてて大丈夫かな。死んだりしないよね?」


彼方がそう言った時に三人顔を見合わせる。そうだよ、この倉庫海が近いんだ。


私たちは一斉に立ち上がって駆け出した。