「――色島は捕まったが、お前は危機感が無さすぎる!容疑者だったことを忘れてたのか!?」






汐里は目の前に瀬戸を正座させ、説教をしていた。
後ろでは修理に出すことになるであろう車がレッカーで運ばれていくのを一颯が見送っていた。
運転席側のドアがベッコリと凹み、サイドガラスやサイドミラーも割れてしまっている。
瀬戸と容疑者が乗る車を停めるためとは言え、車を使うとは荒療治である。





「瀬戸が無事だったんだから良いじゃないですか、京さん」






「それは結果論だ!こっちは車を廃車にしかけた上、始末書だぞ!?」






「車を使って停めろって言ったのは貴女ですよ?あとは俺が上手くやって廃車にならずに済ませました」





《七つの大罪》の色欲の拠点に関して公安の氷室に嫌々ながらも聞き出して、その場所へと向かっていた。
だが、向かっている間に瀬戸達が乗る車を見つけることは出来ずに脇道から出ると、丁度瀬戸達の車がカーブを曲がってきたところだったのだ。
そして、停めようとして停まるものではないと判断し、車を使って停めた。
カーブで少し減速していたことと一颯の咄嗟のハンドル操作で車はヤバイかもしれないが、一颯達も瀬戸達も目立った怪我はない。





「……まあ、廃車になるかもしれませんがね」





「……だな。ムカつくから《七つの大罪》に請求書送りつけてやろうか?」






「それはどうかと……。あと、いい加減瀬戸の正座を崩すように言ってあげてください。さすがにかわいそうです」






話が脱線した中でも瀬戸は正座を続けている。
足が痺れてきているのか身体をモゾモゾと動かしていた。
それを見て何を思ったのか汐里は瀬戸の後ろに回り込み、足をつんと指でつつく。
その瞬間、瀬戸は「うぎっ!?」と飛び上がり、前に倒れた。





「お、飛んだな」





「……最低ですね、貴女」






一颯はろくなことをしない先輩に呆れつつ、動けずにいる瀬戸に手を差し出す。
払われるか、可愛げのない言葉が返ってくるか……。
そう思いつつも一颯は後輩に手を差し伸べる。
すると、瀬戸は一瞬だけ躊躇ったかと思えば、素直に一颯の手を掴んだ。
それには一颯も汐里でさえも驚きである。