「さ、行きますよ」
王子様のように私に手を差し出した先生は、玄関先でにっこりと微笑んだ。
「は~い!!」
いつも車ではFMのラジオを聴く先生が、珍しくCDをかけた。
「どうしたの?」
「ん?これ、昨日数学の先生が持ってたから借りてきた」
先生は、眩しそうな顔をして、サングラスをかけた。
サングラスをかけると怖そうに見える先生。
「お前は覚えていないと思うけど・・・俺にとっては一生忘れられない曲なんだよ」
私だって・・・忘れるわけがない。
ビリージョエルの名曲。
とても悲しい曲。
でも、心が温かくなる切ない曲。