夏休みを前にして、学校では就職の話題ばかりだった。



特別養護老人ホームへの就職を希望している要君は、悩むみんなの相談に乗ってばかりだった。



みんなが悩んでいる中、もう随分前から就職先の希望が決まっている要君。



同じ歳だとは思えないくらい大人に見えた。



「直っぺは、どうすんの?」



最近髪を茶色く染めた要君は、ますますモテているらしい。



「う~ん・・・自分でもわかんないんだ」



ため息をつく私に要君はアメをくれた。



「まぁ、気楽に行けって!これでもなめて、元気出せ!!」




今、ふと考えてしまった。


もし、先生に出会っていなかったらって。



今、先生という存在がいなかったら、私は要君への感情を「恋」だと勘違いしてしまっていたかも知れない。



あんなに激しい胸のドキドキや、眠れないくらいの胸キュンを・・・


知ってしまった。




だから、わかる。




要君へのこの気持ちは「尊敬」や「憧れ」、完璧にそれは友情なんだって。



どことなく先生に似ている口調や、態度が時々私をドキっとさせるんだけど。