御手洗くんと恋のおはなし

 足早で立ち去る男を満は追った。
 スマホを操作しながらも、器用に人混みをすり抜ける男。狭い通路を曲がったので、肩をつかみ振り向かせた。

「お兄さん、待ってよ」
「うわ!」

 その隙をついて、流れる動作で男からスマホを奪った。
 満の身長は、百七十八センチと高い。対して十センチは低そうな男の額を片手で壁に抑えると、満は奪ったスマホに視線をやり眉をひそませた。

「お前何してんだよ!」 と、男は叫んだが──
「それはこっちの台詞だよ。何、これ」

 押さえつけたままの男に、スマホ画面を向けた。
 そこには腹立たしくも、和葉の足元からスカートの中を映した、いわゆる盗撮写真が写し出されていたからだ。
 下劣で卑怯な行為。満の仏顔は盗撮野郎には三度もない。

「ななな、何も……」

 表情の変わった満に萎縮して、男はおののく。
 満はさらにスマホをフリックした。
 すると、和葉以外のものと見られる女性の下半身画像が現れて、ますます満の視線がきつくなった。

「常習犯か。スマホの技術革新は素晴らしいけど、お前みたいなのが繁殖するなら考えものだね」
「お前、いい加減に……!」

 勝手にスマホ操作されたことに腹を立てたのだろう。男は押さえつけられながらも、手を伸ばして奪い返そうとした──が。
 それよりも早く、満は男の手をつかむとねじり上げ、そのまま床に押さえつけるかたちにした。