「…ただ、ちょっと寂しかっただけです。隼にぃの友達で、飲み友達で、今は一緒に暮らしているこんなに近くにいた人がまさか自分の会社の副社長だったって分かって、急に遠い人になったみたいで…」

目を見つめてそれを言うのはさすがに恥ずかしいので、ふ、と目を逸らして伝えた。

すると突然ぎゅっと抱き締められた。

「…っ何それ、可愛過ぎるんだけど…っ」

大石さんの心臓のドキドキがダイレクトに伝わる。それに釣られて私の心臓もドキドキと忙しなく動く。

そして私を抱き締めたまま、

「…沙耶香ちゃん、自分の気持ち、ちゃんと表現出来るようになったね。思ってることとか顔によく出るようになったし。もう、ミッションコンプリートだ」

そう言って大石さんが嬉しそうに、でもちょっと寂しそうに笑うのが空気で伝わった。

「…後は好きな人を見つけるだけ、だね…」

でも、そう付け加えた大石さんの言葉にはどんな気持ちが乗せられているのか、それは私には分からなかった。