2人ともオロオロとこちらを見ている。

「大将ー!こっちにモツ煮とポテサラ一つー!」

「…あ、はーい!」

テーブル席の1番奥の客から追加注文が入る。

新、沙耶香のこと頼む、と隼にぃは上を指差す。

隼にぃの住まいはこの店の2階にある。

泣き出してしまった私を、人目もあるのでとりあえず2階に連れ出してやってくれ、と言う意味だろう。

以前、大石さんもたまに隼にぃの部屋に泊まって行くことがあると言っていた。

隼にぃは私に心配そうな目線を向けながらも、料理に取り掛かる。

「とりあえず、二人分のお代ここに置いてくな」

そうして大石さんは私を店の奥へ誘導した。


本当は今日、ここへくるつもりじゃなかった。明日は早朝ミーティングで早い時間に出社しなければならないから、早く帰宅するつもりだった。

でも私は今日、ここへ来てしまった。
一人の家に帰りたくなかったから。
一人でいたら、確実に泣いてしまいそうだったから。

私には今日、一人でいたくない理由があるー