愛しても、いいですか

"店長 長嶋"と名札を付けた、歳の頃30代半ばくらいの女性が大石さんと私の方へ歩いてきて、私だけを奥の試着室へと連れて行く。

そして一旦フロアへ戻った長嶋さんが、かちゃかちゃと色とりどりの洋服を抱えて戻って来る。

「沙耶香ちゃん、着てみて」

にこりと微笑む大石さん。
はい…と言われるがままに試着室のカーテンを閉めて1着目に袖を通す。
首元のサイドの方で結んだり垂らしたり出来るボウタイの付いたアイボリーのシフォンのブラウスに、ベージュベースにブルー系の幾何学模様の入ったワイドパンツ。

…可愛い…普段なら自分では絶対に選ばないタイプの服だけど、可愛い。

シンプルなてろんとした生地のブラウスにテーパードパンツ、というのが私のオフィスカジュアルの定番だった。

「いかがですか?」