新さんは、ん、と少しだけ目尻を下げて、失礼します、と断ってから父の座った後に腰掛ける。
父が上座に、その左側に新さんと私が並ぶ。
新さんの向かいには麻衣。

テーブルには筑前煮や唐揚げ、だし巻き卵やお刺身、天ぷらなど、私が慣れ親しんだ母の家庭料理が所狭しと並べられていた。

「お母さん、朝から張り切っていっぱい作っちゃったんだよ」

後から来た麻衣がそう言って、母が、

「こらっ余計なこと言わなくて良いの!」

と顔を赤くする。

それを見て私も新さんも、麻衣も父も笑う。

「大石さんは、ビールでいいかな?」

と言う父に、はい、頂きますと答える新さん。

今日は一泊することになっている。
父が新さんとお酒を飲みたいと言ったから。

「息子と酒を酌み交わすのが夢だったんだ」

そう言って目尻にくっきり皺を作って笑う父に、今日はとことんお付き合いします、と乾杯の後1杯目のビールをぐいっと飲み干す。

「おお、いける口だね!」

嬉しそうに2杯目を注ぐ父。

忙しなく台所と居間を行き来していた母にそろそろこっちに来て座りなさい、と父が声を掛け、母は麻衣の隣に腰を下ろしみんなで食卓を囲む。