緊張のあまり玄関先での最初の挨拶を噛んでしまったけれど、新さんのお母様はとても気さくな方のようで、そんなに緊張しなくても大丈夫よ、と新さんとそっくりの優しい顔で笑ってくれた。

1番緊張したのは社長とお会いする時。
新さんのお父様とはいえ、自分の会社の社長である。
一平社員の私がそうそうお目にかかれる人物ではなく、そんな人を前に緊張するなという方が無理な話で。

心臓が口から飛び出すんじゃないかと思うくらいのドキドキを抱えてご挨拶すれば、

「新から話は聞いているよ。こんな素敵なお嬢さんが新と…私はもう大歓迎ですが、沙耶香さんは本当にうちの愚息で手を打っていいんですか?」

と心底心配そうな顔で仰る。

「…父さん、沙耶香の気が変わったらどうするんだよ」

じとっとお父様を睨む新さんに、ガハハ!と笑う社長。

「もちろんです!」

と即答すれば、

「…新、素敵なお嬢さんを見つけたようだな」

そう言って優しく目を細めて新さんと私を見つめる。

新さんの弟さんと婚約者の美咲さんも紹介してもらい、「あの時は変な誤解をさせてしまってごめんなさいね」と謝られた時には思わず赤面してしまった。