私を抱き締めたまま頭を撫で撫でしながら話してくれる。

「もちろんそういう縁談もなかった訳じゃないけど、面倒でずっと断ってたし、そもそも俺に決まった人がいなかったから持ち込まれた話であって。だから、沙耶香ちゃんを正式な婚約者として紹介できたらそんな話ももう来なくなる」

そうやって抱き締めていた私を少し離して悪戯っぽく私の顔を覗き込む。

「…だから、どうかな?…まあ、ほんとは沙耶香ちゃんに逃げられないように外堀から埋めちゃおうって魂胆なんだけど…」

そう言って大石さんは苦笑する。 
それに釣られて私もふふ、と笑って、

「…私ももう大石さんじゃなきゃ無理なので、喜んでお受けします…」

しっかり大石さんの目を見てそう答えた。

すると次の瞬間にはちゅ、と唇を啄むようなキスを落とされ、

「…ありがとう」

くしゃっと笑った。