捨てられた子犬みたいに不安そうに私を見つめる大石さんを見てつい、ぷっ、と吹き出してしまう。

「…ダメじゃないです。…ただ、私なんかで本当にいいのかなーって思ってしまって」

「言ったでしょ?俺はもう沙耶香ちゃんじゃなきゃダメだって。沙耶香ちゃんがいいんだ」

そう言ってアイスのカップをテーブルに置き私をぎゅっと抱き締める。

「副社長の婚約者が、こんな普通の人で大丈夫ですか?家柄の良いお嬢さんとの縁談とかがあったりするんじゃ…」

私の方が不安になって来てそんなことを言うと、

「…沙耶香ちゃん、それ、漫画とかドラマの影響受け過ぎ」

今度は大石さんがぷっ、と吹き出した。

「弟と結婚する美咲も沙耶香ちゃんの言うところの普通の子だし、もっと言えば俺の母親もどこぞの良い家のお嬢さんとかじゃなくて元は下町生まれ下町育ちの普通の人だよ」